1981年 ポーランド 119分
監督/ クシュシュトフ・キェシロフスキ
脚本
撮影 クシュシュトフ・パクルスキ
音楽 ヴォイチェフ・キラル
出演 ボグスワフ・リンダ(ヴィテク)
タデウシュ・ウオムニツキ(ヴェルネル)
ズビグエブ・ザバジェヴィッチ(アダム)
ボグズワヴマ・パヴェレツ(チューシュカ)
ヤシェク・ポルコフスキ(マレク)
クシュシュトフ・キェシロフスキ
1941年ポーランド ワルシャワ出身
多くの映像作家を送り出しているウッチ映画大学を卒業後、ドキュメンター監督としてキャリアをスタート。
聖書の十戒をモチーフにしたテレビシリーズ「デカローグ」。この中の五話と六話を劇場用として再編集し「殺人に関する短いフィルム」1987年「愛に関する短いフィルム」1988年として発表し、世界的評価を受ける。代表作として「二人のベロニカ」1991年 三部作の 「青のトリコロール」1993年 「白のトリコロール」1993年 「赤のトリコロール」1994年がある。
一時期映画監督引退を発表。1995年に復帰宣言し、ダンテ「神曲」をモチーフにした三部作の構想に取り掛かるも翌1996年無念の病死。2002年に脚本の出来上がっていた「天上編」をトム・ティクヴア監督により「ヘヴン」として映画化された。更に2005年原案を下に「地獄編」がにダニス・タノヴィッチ監督によって「美しき運命の傷痕」として映画化された。
人間の持つ不可思議な“運命と“偶然性”をテーマに優れた秀作を発表し続けた映画監督クシュシュトフ・キェシロフスキ。54歳の短い生涯は彼にとっては、どんな運命だったのだろう。
政治的な社会性の強いドキュメンタリー映画からキャリアをスタートした彼は、その後興味の対象を人間そのものに置き換え、劇映画の中で実力を発揮し始める。
「デカローグ」は人間がもつ“業”のようなさまざまなテーマを十話の物語で描き出した。とりわけ“愛”と“死”の二つのテーマに彼の対象は凝縮され始める。
本作「偶然」は1981年の作品。彼の評価がまだ定まる以前の初期の優れた作品でありこの後の作品のテーマにも多くの影響を与えた。
あらすじ及び感想
父の死で故郷に戻っていた主人公のヴィテクはワルシャワ行きの列車にまさに飛び乗ろうとしている。
彼は父の希望を受け入れ医学の道を志すが死を悟った父から意外にも実はそんなことは望んでいないことを告白され、自分自身の進むべき道を見失いそうになっていた。
この映画は、列車に無事乗車した主人公、危ないと警備員に制止され乗れない主人公、間に合わず乗りそこなう主人公のその後の三つのそれぞれのヴィテクの未来が描かれる。それぞれ別の女性と出逢い、別の人生が待ち受けるのだが最後にたどるのは…
一番目のヴィテクはエリート共産党員になるが、組織の中で密告者としての役目を負わされ、恋人も失う。二番目のヴィテクは、反共産主義者のカトリック信者の地下出版活動家だが、あらぬ疑いをかけられ組織を追われる羽目に。三番目のヴィテクは大学に復学して政治には無関心だが医学者として思いのままの人生を歩む。
それぞれの人生で、投獄と拷問を乗り越えた元党員や、地下出版活動に情熱を傾ける神父、息子が反党活動で逮捕される恩師の大学学部長との関わり合いの中で成長し、未来を信じて生きているヴィテク。
三人のヴィテクは同じ日の同じ時刻のパリ行きの飛行機に搭乗した。もちろんそれぞれの事情で…
私はこの作品を数年前に、DVDの「デカローグ」を購入したついでに「キェシロフスキ・コレクションプレミアムBOX」も買い求めました。特典に監督のインタビューが収録されていたので。しかし初期作品の中のこの「偶然」を観て発想の斬新さに圧倒されました。三つのストーリーが絡み合って展開する物語は一般的ですが、ある状況の中での出来事がその後の運命を大きく変えていく。まさしく英題の通り「Blindo Chance」とは巧く言ったものです。
後にピーター・ホーウィットが「スライディング・ドア」トム・ティクヴァが「ラン・ローラ・ラン」を発表していますが、両監督はおそらくこの「偶然」に影響を受けたものと思われます。特に、前述したようにトム・ティクヴァは「ヘヴン」を完成させていますから。
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