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ひとり旅が好きで国内47都道府県を制覇。数年前に広告会社を早期退職後ぷらぷらしながら行った国。中華人民共和国、中華民国台湾、ラオス、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、モンテネグロ、アルバニア、ギリシャ(コルフ島だけ)等。地元の人が食べるものを食べ、美術館を見るのが良いですね!映画に関しては、やはり映画が必要とされていた黄金期の邦画が好き。溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男、木下恵介、渋谷実、山本薩夫、新藤兼人、増村保造、森一生、三隅研次、久松静児等。 浦島太郎状態で迎えた2011.3.11 自分にできる事は少なく、考えた末除染作業に参加。しかし除染作業も一時中断し、瓦礫撤去作業と考え宮城へ来てみるが瓦礫撤去作業も一段落したようで…
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2012年3月5日月曜日

図書館で観た映画作品(VHS/LD)江別市情報図書館

昨年末、諸事情で札幌の隣りまち江別市に住民票を移しました。

その後は福島県での除染作業に参加しました。現場作業員の一員として…

日本原子力研究開発機構(JAEA)が発注者で正式名称は「警戒区域。計画的避難区域等における除染モデル実証事業」

受託者は大手ゼネコン数社の共同企業体、いわゆるJVです。

作業目的は〇☆地区の除染エリアで適切な除染計画の策定や除染作業の効果についての評価等を行う。ということでした。

業務実施機関:平成23年11月22日~平成24年3月2日

私が参加したのは12月13日~翌年の1月24日迄です。ふたつのまちの除染に加わりました。

本当にゴーストタウンでした。(鉢絽前大臣の発言が問題視されましたが…)福島の人々は気の毒に思います。

2011.3.11のあの日の衝撃はやはり言葉には言い表せないものでした。

早期退職以降、これといった社会との関係をある意味放棄していた自分自身にできること(仕事という意味でも。50代の再就職は厳しいものですね?)がこの除染作業に参加することでした。

除染作業は今後、市町村レベルで本格化するまで現在は小休止状態ですので、急遽本日フェリーに乗り宮城へ瓦礫撤去作業へ行くことにしました。

所謂肉体労働は、生まれて初めてですが何か清清しい気持ちになりました。

除染の内容は改めてアップしようと考えています。

タイトルの内容に戻ります。私は学生時代に、名古屋市の鶴舞中央図書館でバイトをしたことがあり、図書館を比較的利用する者としても、この江別市情報図書館はお薦めです。

特にAVコーナーが(無論アダルトビデオではありません。念のため?)

DVD化されていないVHS作品と今はなつかしいLD(レーザーディスク)もあります。

それがなんと全て無料で見ることができます。貸し出しはできませんが。当時は江別市民ではありませんでしたが、札幌市民でも見ることはできるそうです。

スタッフの方々も親切で好感が持てます。多くの方が入れ替わりいらっしゃるのであるいはボランティアスタッフの方かも知れません?





DVD,LD,VHSそれぞれに対応。二人掛け用ソファーと一人用椅子席があります。

鑑賞した作品

小津安二郎監督
  1. 生まれてはみたけれど
  2. 浮草物語
  3. 東京の女・大学はでたけれど
  4. 学生ロマンス 若き日
  5. 淑女と髯
  6. 青春の夢いずこに
  7. その夜の妻
  8. 出来ごころ
  9. 朗らかに歩め
  10. 落第はしたけれど
  11. 父ありき
  12. 一人息子
  13. 長屋紳士録
  14. 風の中の牝鶏
  15. 晩春
  16. 早春
  17. 麦秋
  18. 秋日和
  19. お茶漬けの味
  20. 東京暮色
  21. 彼岸花
  22. お早う
  23. 小早川家の秋
  24. 秋刀魚の味
溝口健二監督
  1. 西鶴一代女
  2. 虞美人草
  3. 折り紙お千
  4. 女優須磨子の恋
  5. マリアのお雪
  6. 宮本武蔵
木下恵介監督
  1. 惜春鳥
  2. 陸軍
  3. 海の花火
  4. この子を残して
  5. 遠い雲
  6. 大曽根家の朝
渋谷実監督
  1. 現代人
  2. 好人好日
  3. 酔っ払い天国
  4. 自由学校
吉村公三郎監督
  1. 五人の兄弟
  2. わが生涯のかがやける日
五所平之助監督
  1. 猟銃
豊田四郎監督
  1. 雪国
田坂具隆監督
  1. 海軍
成瀬巳喜男監督
  1. あに・いもうと
アンジェイ・ワイダ監督
  1. ドイツの恋
  2. 愛の記録
  3. 白樺の林
  4. 蝿取り紙
  5. 戦いのあとの風景
  6. ザ・コンダクター
アルフレッド・ヒッチコック監督
  1. レベッカ
  2. 白い恐怖
  3. 断崖
  4. ダイヤルMを廻せ!
  5. マンクスマン
  6. 汚名

その他作品
  1. ふたりのベロニカ
  2. 愛の嵐
  3. ホテル・ニューハンプシャー
  4. 長距離走者の孤独
  5. イングリッシュマン・イン・ニューヨーク
  6. 日の名残り
  7. ジャズ大名
  8. 斬る
  9. 剣鬼
  10. 大魔神
  11. 大魔神怒る
  12. 大魔神逆襲
  13. 新・忍びの者
  14. にあんちゃん
この他にもまだたくさん貴重な作品が用意されています。黄金期の邦画に興味のある方は是非利用されてみては?







2011年10月31日月曜日

映画「人間」の原作「海神丸」野上弥生子著(岩波文庫)

野上弥生子の初期を代表する短編小説。1922年(大正11年)春陽堂から出版。その後1929年(昭和4年)岩波文庫から出版。1917年(大正6年)に実際に起きた高吉丸の海難事件をモデルにした物語。極限状況におかれた人間のすさまじくも哀しい姿を冷徹なタッチで描いた作品。後日物語に記されているように、野上の生家(大分県臼杵市の小手川酒造)に近い下ノ江の漁村から出航した60㌧のスクーナー船が漂流の間に起こした恐ろしい出来事を実弟の小手川金次郎から伝えられたメモにもとづいてわずかに虚構化した野上自身唯一のモデル小説。小手川金次郎は高吉丸の船長である(亀五郎こと)渡辺登久蔵が生家に出入りしていた船頭のひとりだったので事の詳細を聞いていたようです。
事件から52年後、野上は高吉丸を救助した慶津丸の当時の船員から電話を受け、後日対面し、当時の状況を改めて聞くことになります。その内容は1968年(昭和43年)6月号の「文学界」に掲載されたようで、この文庫にも転載されています。
 
私は先に映画を観てから原作を読んだのですが、とても興味深い内容でした。原作は僅か66ページの内容を映画では117分に描いています。新藤作品には以前から興味があり、一番好きな「裸の島」の次に撮った作品がこの野上弥生子原作の映画「人間」です。経営が厳しい独立プロダクションにあって近代映画社もまた例外ではなく、低予算で撮った「裸の島」がモスクワ映画祭のグランプリを受賞し、世界各国での配給権のお陰で経営的にも一息ついたと自身のDVDでの解説で語っていました。その後も少数精鋭主義の撮影スタイルは変わりませんが…

国内現役最高齢の映画監督として、脚本家としても優れた作品を発表し続けている新藤監督はこの「人間」でも自身が脚本を手がけています。また出演者も新藤作品の常連である俳優で占められています。脇役で名バイプレーヤーとして多くの映画作品に出演している殿山泰司の数少ない主演映画です。


1962年 製作:近代映画協会 配給:ATG  上映時間117分 
                       
監督/脚本 新藤兼人

原作 「海神丸」野上弥生子

撮影 黒田清己

音楽 林光 
 
出演 殿山泰司(亀五郎)

    佐藤慶(八蔵)

    乙羽信子(五郎助)

    山本圭(三吉)

    観世栄夫(金毘羅さん)                                                       
                                                                                         
                                                    



                     

2011年10月15日土曜日

映画 「羊の啼き声」 監督:ジェルジ・ジュヴァニ

「羊の啼き声」(原題:I dashur amik) 英題 Dear enemy   

2004年 92分


アルバニア=フランス=ドイツ  (日本国内劇場未公開作品)

監督 ジェルジ・ジュヴァニ

脚本 ジェルジ・ジュヴァニ / ジミタル・ジュヴァニ

撮影 ナラ・ケオ・コサル

音楽 チョスタコヴィッチ


  出演 ンドリチム・ジェパ(主人公ハルン)

    ペーター・ローマイヤー(ドイツ将校フランツ)

    ルイザ・ジュヴァニ(ヴェフイ)

      ニナ・ペトリ(ゲルタ)
                    
                          マルガ・チェペ(祖母)

                          ビリス・ハスコ(ホアキン)
  

               
                 


ジェルジ・ジュヴァニ

アルバニア ティラナ出身  1963年生まれ

1986年ティラナ芸術アカデミー演劇科卒業後、数々の映画作品に助監督として携わる。91年短編映画「ブラック・アンド・ホワイト」で監督デビュー。93年「ラスト・サンデー」でモンペリエ地中海映画祭特別賞を受賞。

94年「ア・デイ・オブ・ライフ」95年「ラスト・ラブ」99年「ビジネス・フューネラル」がヴェネツイア映画祭で注目され2001年「スローガン」で第14回東京国際映画祭でグランプリを受賞。2008年「イースト・ウエスト・イースト・ザ・ラスト・スプリント」を発表。また過去に俳優としてのドラマ、映画出演がある。

残念ながら日本では全て劇場未公開。「羊の啼き声」は2002年度のサンダンス・NHK国際映像作家賞受賞脚本でNHK-BSで2006年5月11日に一度だけ深夜衛星劇場で放映された。



東欧でもかなり珍しいアルバニア映画です。個人的にアルバニアに昔から興味があります。ひとつはアメリカテレビドラマの「コンバット」第104話(敵中横断)のストーリーにヘンリー少尉がアルバニア兵の将校に変装して脱走をするという回で初めてアルバニアなる国を意識しました。

二つ目は1971年中華人民共和国が国連から、中華民国(現中華民国台湾)を追放する時にアルバニアが議案を提出した第26回国際連合総会2758号決議。通称「アルバニア決議案」ただこの二つが子供心にインプットされ続け、二度旅行に行ってきました。

私の知り合ったアルバニア人、近隣(マケドニア、モンテネグロ)に住む人も親切で好感が持てました。ヨーロッパの他の国であまり評判がよろしくないのは寂しいことです!


あらすじ及び感想

1943年のアルバニアのある地方の町から占領していたイタリア軍が連合国に降伏したため、撤退し始めるのですが、代わりに進駐してきたドイツ軍は逃げ遅れたイタリア兵を次々に射殺していきます。混乱した商店街から、食料品などを盗み出していた雑貨商の主人公のハルンは負傷したイタリア兵の頼みを渋々受け入れトラックの荷台に忍ばせます

大家族が住んでいる自宅の地下室にはパルチザンの兵士が匿われています。そこに本来は敵であった筈の負傷したイタリア兵が加わります。そしてドイツ軍の進駐を恐れてハルンの知り合いのユダヤ人の時計職人も新たに地下室の住人の仲間に加わります。その後ドイツ人将校のフランツがハルンの知り合いの男を通訳と介して相談を持ち込みます。ドイツ軍への食料、物資の調達です。当然断ることもできず引き受けることになるハルン。

誰にも分け隔てなく人と接すうハルンはドイツ人将校のフランツにも信頼され、ある日ハルン家を訪問します。慌てふためく家族と地下室の住人たち。しかしドイツ人将校のフランツも敵国の将校ではありますが、ひとりの人間としては紳士的な人物です。家族と地下室の住人はなんとか無事にその場を乗りきります。

その後、フランツの通訳をしていたハルンの知り合いの男も地下室の仲間に加わることになります。国籍(アルバニア、イタリア、オーストリア《長男の嫁》や宗教(ムスリム、キリスト、ユダヤ)も違う、人々が、生きるために一体となって懸命に協力しあう住人と家族の姿があります。

そして戦局がドイツ軍にとって不利な状況になります。撤収を始めるドイツ軍。フランツはお世話になったハルン一家のために羊を贈ることを思い立ちます。撤収の最中ハルン家の家の門を叩きます。門の前で待っているとそこで待っていたのはパルチザンの兵士でした。銃声が響き、羊の啼き声が辺りいっぱいに響き渡ります。

ハルンはフランツの最後を看取ります。地下室にいた住人たちも力を合わせて地中に埋葬してあげます。

次の日解放され町は歓喜に満ち溢れていました。ハルン家にも多くの人々が集まり、歌い、踊って喜びをわかちあっています。そこへ銃を持ったパルチザンの男たちが現れドイツ兵の味方をした罪でハルンを逮捕して連れ去ってしまいます。
後に残された人々は呆然として立ちすくんでいるだけです。

極限状況の中での人間の逞しさ。人としてのあり方を声高に叫ぶのではなく、自分自身に出来ることを自然体で行う意思の強さ。ハルンの生き方に多くのことを改めて考えさせられました。同じ民族が周辺諸国に点在するアルバニア人のジュヴァニ監督だからこそ、この映画の意味は重要だと思います。邦題の「羊の啼き声」は本編の一場面から名付けたのでしょうが、原題の「親愛なる敵」のほうが雰囲気が伝わる気もしますが…

このストーリーは監督の祖父がモデルとのことです。

※テレビ放映時、不覚にもタイマーの不調で全編見れずに、海外の動画サイトで観ました。「スローガン」「ラスト・ラブ」「ア・デイ・オブ・ライフ」もアルバニア語ですが観る事が出来ます。「スローガン」だけは英語の字幕がありました。






2011年10月14日金曜日

映画監督 久松静児の世界 庶民の目線で時代を描く


久松静児 

1921年 茨城県新治郡栄村出身。1990年死去。
     第一外語学校英語科中退後、河合映画製作所入社。その後新興キネマへ移籍。1934年「暁の合唱」で監督デビュー。戦中戦後を大映でプログラムピクチャーを中心に活躍後、フリーになり、日活、東京映画、東宝などの各社で数多くの作品を撮り続けた職人気質の監督。


代表作に「安宅家の人々」1952年(大映) 「警察日記」1954年(日活) 「神阪四郎の犯罪」1956年(日活) 「愛妻記」1959年(東京映画) 「地の涯に生きるもの」1960年(東宝) 「南の島に雪が降る」1961年(東京映画) 「クレージー作戦先手必勝」1961年(東宝) 「喜劇駅前茶釜」1961年(東京映画)を含む駅前シリーズ等。

                                         


よほどの映画好きでも、好きな映画監督にあまり久松静児監督を一番にあげる人はいないでしょう。(もしいたらスミマセン)私も、レンタルビデオのサイトで偶然「神四郎の犯罪」を見つけ申し込みをしました。

随分と昔の学生時代に、石川達三の小説「神坂四郎の犯罪」を呼んだことがあり、強く印象に残っていて映画化されていることに驚きました。法廷劇ですが、明確な結論は出さず主人公の「現実の社会では真相らしきもが真相で第三者の客観性だけが真実とされ、それが時には冤罪を生みだすのだ」というセリフが心に残ります。シリアス森繁初めて見ました!
ちなみに映画のの字は、撮影中に同姓同名の神坂四郎氏なる人物が名乗り出て急遽一文字を変えたそうです。




その作品で初めて、久松静児なる存在を知ることになりました。「警察日記」を次にレンタルして観ました。どちらの作品にもデビューしたての若き日の宍戸錠が端役で出演しています。

会津地方の農村を舞台にした庶民と人情警官の物語です。監督の目線の低さに共感がもてます。当時三歳の二木てるみの演技に脱帽です。農村の秋の祭り頃に幟が立つのですが、「五穀豊穣」といっしょに「四海恭平」という四文字に何か国の安泰と平和を願う人々の思いが偲ばれます。



その後、喜劇駅前シリーズ。このシリーズ作品全24本のうち、佐伯幸三監督の12本には及びませんが2作目から6作目までの5本が久松監督がメガホンを撮りました。1作目を撮った豊田四郎監督作品は文芸調の内容でしたので、実際はタイトルに〝喜劇〟が付け加えられた2作目の「喜劇駅前団地」からがシリーズが始まったといっても過言ではないでしょう。 3作目「喜劇駅前弁当」4作目「喜劇駅前温泉」5作目「喜劇駅前飯店」6作目「喜劇駅前茶釜」と続きます。庶民の生活と笑いの ペーソスを鏤めて。さらに数あるクレージキャツシリーズのひとつ「作戦シリーズ」の一作目を担当します。 
                             
                      
そうしてある程度の作品を鑑賞した時に思い出したのが、「南の島に雪が降る」でした。かなり以前?二十年くらい昔?日曜日の午後にテレビの邦画放送の枠があった時期に何度か放送されていて、二度ほど見た記憶がありました。俳優の加東大介の体験を下にした作品で、地味な作品ですが、心に残る内容でした。

この作品も久松作品と気付かされ少し言いようのない感情に突き動かされました。戦中戦後と、メロドラマやスリラーものを量産していた久松監督は会社側にはおそらく無難な作品を撮ってくれる安心してまかせられる監督だったのでしょう。

そんな監督が、子息に何かの折に、「お父さんの代表作ははどんな作品?」というようなニュアンスで聞かれたそうです。そんなことを考えたこともなかった職人肌の監督はそこから奮起し、「警察日記」は大ヒットし自己のスタイルを完全に確立し、名声を得たようです。

昨年NHK-BS放送で「地の涯に生きるもの」が放映されました。ソフト化されていない貴重な作品です。森繁プロダションの記念すべき第一作品だったようです。知床の漁師の過酷な冬の暮らしぶりが丁寧に描かれていますが、残念ながら映画自体はあまりヒットしなかったようです。
松竹のイメージが強い渥美清も少しだけ出演していました。



森繁久彌は多くの久松作品に出演していますが、この作品では俳優のほかにプロデューサーも兼ねており、作品にかける思い入れは並々ならぬものがあったようで、ロケ中に口ずさんだ歌がやがて大ヒットした「知床旅情」の元歌だったと言うのは有名な話ですよね。




超大作や話題作とは無縁な久松静児監督は巨匠と言う範疇に入るかどうか私にもわかりませんが、もう少し評価されても良い映画監督であることは間違いありません。
本人の自伝のようなものも残されてなく、色々探して見ましたが写真もありませんでした。
取り上げられている唯一の書籍は「日本映画の巨匠たちⅡ」佐藤忠男著くらいのようです。
(キネマ旬報の1956年度4月上旬号で特集が組まれていたようですが古書店巡りですね!)
 
学陽書房刊















2011年10月13日木曜日

映画 「偶然」 監督:クシュシュトフ・キェシロフスキ

 
偶然(Przypadek) 英題 blind chance

1981年 ポーランド 119分

監督/ クシュシュトフ・キェシロフスキ
脚本

撮影 クシュシュトフ・パクルスキ

音楽 ヴォイチェフ・キラル

出演 ボグスワフ・リンダ(ヴィテク)
    タデウシュ・ウオムニツキ(ヴェルネル)
    ズビグエブ・ザバジェヴィッチ(アダム)
    ボグズワヴマ・パヴェレツ(チューシュカ)
    ヤシェク・ポルコフスキ(マレク)




クシュシュトフ・キェシロフスキ 

1941年ポーランド ワルシャワ出身

多くの映像作家を送り出しているウッチ映画大学を卒業後、ドキュメンター監督としてキャリアをスタート。

聖書の十戒をモチーフにしたテレビシリーズ「デカローグ」。この中の五話と六話を劇場用として再編集し「殺人に関する短いフィルム」1987年「愛に関する短いフィルム」1988年として発表し、世界的評価を受ける。代表作として「二人のベロニカ」1991年 三部作の 「青のトリコロール」1993年 「白のトリコロール」1993年 「赤のトリコロール」1994年がある。

一時期映画監督引退を発表。1995年に復帰宣言し、ダンテ「神曲」をモチーフにした三部作の構想に取り掛かるも翌1996年無念の病死。2002年に脚本の出来上がっていた「天上編」をトム・ティクヴア監督により「ヘヴン」として映画化された。更に2005年原案を下に「地獄編」がにダニス・タノヴィッチ監督によって「美しき運命の傷痕」として映画化された。


人間の持つ不可思議な“運命と“偶然性”をテーマに優れた秀作を発表し続けた映画監督クシュシュトフ・キェシロフスキ。54歳の短い生涯は彼にとっては、どんな運命だったのだろう。

政治的な社会性の強いドキュメンタリー映画からキャリアをスタートした彼は、その後興味の対象を人間そのものに置き換え、劇映画の中で実力を発揮し始める。

「デカローグ」は人間がもつ“業”のようなさまざまなテーマを十話の物語で描き出した。とりわけ“愛”と“死”の二つのテーマに彼の対象は凝縮され始める。

本作「偶然」は1981年の作品。彼の評価がまだ定まる以前の初期の優れた作品でありこの後の作品のテーマにも多くの影響を与えた。


あらすじ及び感想


父の死で故郷に戻っていた主人公のヴィテクはワルシャワ行きの列車にまさに飛び乗ろうとしている。
彼は父の希望を受け入れ医学の道を志すが死を悟った父から意外にも実はそんなことは望んでいないことを告白され、自分自身の進むべき道を見失いそうになっていた。

この映画は、列車に無事乗車した主人公、危ないと警備員に制止され乗れない主人公、間に合わず乗りそこなう主人公のその後の三つのそれぞれのヴィテクの未来が描かれる。それぞれ別の女性と出逢い、別の人生が待ち受けるのだが最後にたどるのは…

一番目のヴィテクはエリート共産党員になるが、組織の中で密告者としての役目を負わされ、恋人も失う。二番目のヴィテクは、反共産主義者のカトリック信者の地下出版活動家だが、あらぬ疑いをかけられ組織を追われる羽目に。三番目のヴィテクは大学に復学して政治には無関心だが医学者として思いのままの人生を歩む。

それぞれの人生で、投獄と拷問を乗り越えた元党員や、地下出版活動に情熱を傾ける神父、息子が反党活動で逮捕される恩師の大学学部長との関わり合いの中で成長し、未来を信じて生きているヴィテク。


三人のヴィテクは同じ日の同じ時刻のパリ行きの飛行機に搭乗した。もちろんそれぞれの事情で…


私はこの作品を数年前に、DVDの「デカローグ」を購入したついでに「キェシロフスキ・コレクションプレミアムBOX」も買い求めました。特典に監督のインタビューが収録されていたので。しかし初期作品の中のこの「偶然」を観て発想の斬新さに圧倒されました。三つのストーリーが絡み合って展開する物語は一般的ですが、ある状況の中での出来事がその後の運命を大きく変えていく。まさしく英題の通り「Blindo Chance」とは巧く言ったものです。

後にピーター・ホーウィットが「スライディング・ドア」トム・ティクヴァが「ラン・ローラ・ラン」を発表していますが、両監督はおそらくこの「偶然」に影響を受けたものと思われます。特に、前述したようにトム・ティクヴァは「ヘヴン」を完成させていますから。


プレミアムコレクションBox







2011年10月12日水曜日

映画 「影」 監督:イエジー・カヴァレロヴィッチ


「影」(CIEN)英語タイトル:SHADOW
1956年 ポーランド 94分

監督 イエジー・カヴアレロヴィッチ

脚本 アレクサンドル・シチボル・リルスキ

撮影 イエジー・リップマン

音楽 アンジェイ・マルコフスキー

出演 イグナチー・マホフスキー(ビスクピック)
    ズイグムント・ケントスウィッチ(医師クニシン)
    アドルフ・フロニツキー(高官カルボウスキ)
    タデウシュ・ユラシュ(炭鉱労働者ミクーラ)
    エミール・カレヴィッチ(兵士ヤシチカ)


イエジー・カヴァレロヴィッチ 
1922年ポーランドGwazdziec現ウクライナ領生まれ。アルメニア系。2007年死去。クラコフで美術と映画を学んだ後、1951年監督デビュー。1955年から映画ユニットkador(カドル)を運営。1960年「夜行列車」「尼僧アンナ」を発表。カトリックが大半のポーランドで公然と無神論者を名乗ったため国内の評価は低く。逆に国外で高い評価を受ける。政治的社会的色彩の強いなか社会主義リアリズムの枠内で心理主義的な描写にこだわり、国内の他の監督とは異なる作風が特徴と言える巨匠。

炭鉱労働者のミクーラ

物語は、対独戦中(1943年)戦後混乱期(1946年)現在(映画作成時の1950年代)の三つの時代に起こったれぞれの事件がひとつの線に結びつく政治的推理ストーリー。

すこしポーランドの置かれたその時代背景を理解したほうが良いかも知れません。ナチスドイツに電撃占領されたポーランドはその後ソビエトにも国土の半分を占領されます。

当時の政府はロンドンを拠点に亡命政府を樹立し、指揮下の国内軍に抵抗運動を継続させます。それとは別に多くの党派の配下の抵抗組織が運動を始めます。労働党(共産党)指揮下の人民軍がこの映画の中心です。左翼陣営は他にも、社会党左派やその他諸派とゆるやかな連携を組んでいたようです。反対に自衛団に入ってドイツ側に協力す人もいましたし、多くのドイツ系の住民もいて複雑な状況下であったようです。

同時代を描いたワイダ監督の抵抗三部作の「世代」がこの作品と同じ人民軍の地下組織の若者の物語です。「地下水道」は国内軍のワルシャワ蜂起の終焉を描き。「灰とダイヤモンド」では終戦後の混乱期の旧国内軍の残党のテロ?を描いた内容です。同じく同監督の「鷲の指輪」は国内軍と人民軍の戦後の主導権争いの抗争を描いた作品でそれらの作品を観ることによって本作品も内容が一層興味深く見ることができると思います。

あらすじ

1950年代のある田舎の町。男女のカップルが仲良くしながら、車を走らせていると脇を並走して走っている列車の最後尾から男が飛び降りる。急いで二人は男の下に駆けつけるが飛び降りた衝撃で男の顔面は激しく砕けていた。近くに民家があったので、もしかするとその家に関係する人物かと考え、家の老婆に聞いてみるが、無関係であった。

警官に状況を説明する二人。しかし死んだ男は上着を身に着けておらず身分証もないので何者かもわからない。
立ち会った医師のクーニンは戦時中のある事件を思い出していた。

クーニンは戦時中左派のある地下組織に属し、ビスピックという男の経営する修理屋をアジトに活動をしていた。ある日クーニンの隊は資金獲得のためにドイツ協力者の店を襲撃した。その時別の集団が店内に現れ、互いに驚き、激しい銃撃戦になった。クーニンは無事だったが、大半が死傷し、先方のリーダーは脚に銃弾を浴びながら逃走した。

その後、左派の党派の合同会議に出席したクーニンはその時の逃走したリーダーと出会い実はあの隊は仲間の組織だった知ることになる。襲撃の時間を知らせたのはビスピックであった。



鉄道事故の付近で無賃乗車の男が捕まった。男は事情を話さないでいる。そこに公安省高官のカルボウスキが立会い、戦後の混乱期の出来事を思い出していた。(チビ)という名前の武装組織(旧国内軍のような装備)を追ってヤシチカという兵士と敵の本拠地に潜入することができた。しばらくすると、実はヤシチカは敵のスパイであることがわかった。危機一髪の中でカルボウスキは隠し持っていた手榴弾を爆発させ、脚を吹き飛ばされながらも奇跡的に一命を取り留める。ヤシチカは党の有力者のビスピックの推薦で採用された兵士だったのだ。

男は自白した。彼は炭鉱労働者のミクーラ。彼はある有力者の頼みで、炭鉱に男たちを招き入れた。しかしその男たちは坑内で放火をし、多くの労働者が犠牲になった。ミクーラは話の仲介をした男に事情を求めるが逆に襲われる羽目に陥る。
結局容疑者扱いされた彼は身の証を立てるためにその有力者を探し、とうとう列車内でその男を見つけた。そして、男は列車から転落する。

その男こそがビスピックだった。こうして、三つの時代の事件の影がひとつになった。


内容はかなり重いものですが、極限状況におかれた人物の心理描写には感心させられるものがあります。三つの謎(影)がひとつになる展開は今改めて観ても興味をそそります。個人的には、国内軍の残党に対する描き方が、悪の権化のような扱いですが、時代背景や、カヴァレロヴィッチ監督の立場を考えると致し方ないのでしょう。

その政治的スタンスが後に、自主管理労組”連帯”に対する対応がワイダ監督と決定的に違うものになったのかも知れません。しかし、映画に対する姿勢は同時代のなかでも異彩を放つ素晴らしい監督です。心理描写の視点で考えた時、同監督の「夜行列車」もその実力を発揮した名作です。















2011年10月11日火曜日

映画「ビフォア・ザ・レイン」監督ミルチョ・マンチェフスキー

ビフォア・ザ・レイン(Before the Rain)

1994年 イギリス=フランス=マケドニア 115分

監督 脚本 ミルチョ・マンチェフスキー

撮影 マニュエル・テラン

音楽 アナスタスオ

出演 カトリン・カートリッジ(アン)
    レード・セルベッジア(アレックス)
    グレゴワール・ゴラン(キリル)
    ラビナ・ミテフスカ(ザミラ)
    リュピチョ・ブレスレスキー(ミトレ)
    イゴル・マッジロフ(ストヤン)
   ヴラディビル・エンドロフスキー(トライチェ)
   アブドゥラフマ・ンサリリャ(ザラミの祖父)
   ジェイ・ヴイリアーズ(アンの夫ニック)
   フィリダ・ロウ(アンの母)
   メト・ヨヴォノフスキー(サソ医師)
   シルヴィヤ・ストヤノスカ(ハナ)
   

ミルチョ・マンチェフスキー  
1959年マケドニア、スコピエ出身。南イリノイ大学映画課程卒。
81年マケドニアで映画製作活動を開始。85年ニューヨークへ移住。法廷通訳の後、ミュージックビデオの監督として頭角を現しドキュメンタリー・短編映画を製作。85年ベオグラード映画祭最優秀実験映画賞受賞。86年クロアチアスプリット映画祭で最優秀作品賞を受賞。92年度MTV賞、ビルボード賞の最優秀ビデオ賞を「テネシー」でダブル受賞。94年長編作「ビフォア・ザ・レイン」でヴェネチア国際映画祭グランプリをはじめ数々の映画祭賞を受賞。2001年「ダスト」2007年「シャドー」発表。小説「The Ghost of My Mother」等も出版し、多彩な才能を発揮している。


あらすじ及び感想 
 
プロローグ

荒涼としたマケドニアの丘陵、若い修道士キリルが畑でトマトをもいでいる。老僧が雨が近いことを告げるが、キリルは沈黙修行のため話すことができない。老僧が呟く。「時は死なず、巡ることなし」
  
第一部…言葉

キリルが夜修道院の部屋で休もうとすると、人の気配があった。アルバニア人の女の子であった。何ものかに追われているらしい。女の子の名前はザミラ。言葉が上手く通じないが、キリルは事情を察し受け入れる。翌日銃を持ったマケドニア人の集団がやって来た。ザミラが彼らの仲間をどうやら殺して逃げてきたらしいことがわかった。

集団はネコを撃ち殺したりしながら懸命に探すが見つけることができない。夜中にザミラが戻りふたりは恋に落ちてしまう。民族間の紛争が始まった過酷な状況の中で。次の日の朝、ザミラが隠れていることが主教に見つかり、主に背いたキリルは破門され修道院からふたりは手に手をとって逃れる。

朝まで歩き続け丘の上で休んでいると、ザミラの祖父の一行に見つかりかれらはザラミの行動を激しくなじり殴りつける。キリルは心配だが、立ち去るように言われ、泣く泣く離れようとすると、そこへザミラがキりルの後を追うとザミラの兄の銃弾がザミラを打ち抜く。倒れ息を引き取るザミラ。

第二部…顔

ロンドンシティのオフィス。アンは自分が妊娠したことを医師からの電話で知らされる。その時、愛人?である戦場カメラマンのアレックスがやって来た。国際的に著名なアレックスは突然仕事を辞め、故郷のマケドニアに戻るので一緒に来てほしいと言うのだ、今夜の便で帰国すると言う。航空券を渡されるがアンは思い悩む。

その夜、夫のニックと約束していたレストラン。過去の過ちは忘れるのでやり直しを求めるニック。妊娠のことを話すとシャンパンを注文して喜ぶ心優しい夫を見て気持ちが揺らぐアン。意を決して離婚を切り出すが、ニックの悲しむ顔をみてますますこころの判断がつかなくなる。その時、店の中で客とウェイターが騒ぎを起こし、店内が騒然となる。騒ぎを起こした客が店を出て静けさを取り戻すが、暫くして戻ってきたその客が店内で突然銃を撃ちまくる。パニックになる店内。ニックは死んだ。アンはニックの血だらけになった顔を見ながら茫然となって座り込む。

※キリルとザミラが二部のストーリの中に思わぬ形で現れます。アンの仕事はフォトエージェンシーの編集者です…


第三部…写真

十六年ぶりに戻ってきたマケドニアは民族紛争の影響で首都スコピエにも国連軍の装甲車が展開している。故郷の村に向かうオンボロバスの中で、「こんな時になぜ戻ってきたんだと」と話しかけられるアレックス。無人の荒れ果てた実家で一晩を過ごし、従兄弟の家族と束の間の語らいを始めるが、やはりこの故郷の村にも争いの火種は燻り始めているようだ。

幼馴染のアルバニア人のハナを尋ねようとすると、止めるようにと諭されるアレックス。しかし家族への手土産を持ち、アルバニア人居住区に向かうと、ここでも歓迎されることはない。いきなり銃をもった若者に行き先と場所を詰問される。なんとかハナの父親が覚えていて再開を果たす、ハナの夫は昨年事故で亡くなったらしい。しかし、マケドニア人であるアレックスの訪問を口汚い言葉で罵るハナの息子。

そして事件は起こった。アレックスの従兄弟が干草のフォークで刺されて殺された。殺した犯人はなんとハナの娘のザミラだった。その夜アレックスはハナの幻影を見た。いやそれは現実のハナだった。娘を助けてほしいと懇願するハナ。幼い時に恋心があったかも知れない二人。自分の娘だと思って救ってほしいと言い残し立ち去るハナ。

戦争取材で、間接的に殺人を手助けしてしまったと思い悩んでいたアレックスはその忌まわしい証拠の写真を破り棄て、意を決しザミラの救出に向かう。従兄弟たちが監禁している小屋からザミラを救い出し、立ち去ろうとすると、裏切りの行為の代償の銃弾がアレックスを襲う。仰向けに倒れたアレックスは、言葉をかける従兄弟に、雨が近いと言い残して絶命する。

アレックスのおかげでその場を逃れたザミラは丘の上の修道院を目指す。その畑には若い修道僧キリルがトマトをもいでいた。老僧が近づき、雨が近いことを告げる…。




劇場公開時に見た印象が強烈で、その後VHSのビデオを購入しました。16480円もしましたがその価値はあります。メビウスの輪になる三部構成は計算し尽くされた素晴らしいストーリ展開です。
三話のタイトルの「言葉」「顔」「写真」単純な文字の意味がそれぞれのストーリーに複雑に繋がっていることに納得させられます。

また素晴らしい映像美、そのロケーションは実際訪れたくなるほどの力を持っています。2006年の夏休みに思い出しオフリド湖へ行ってきました。聖ヨハネ・カネヨ教会は小さくてかわいらしかったです。内部は少し残念でしたが、冒頭シーンの畑の中のトマトをもぐのを覚えていてレストランで注文しましたが本当においしかったです。

因みに、アルバニア人少女ザミラ役のラビナ・ミテフスカは当時18歳のマケドニアの学生。役作りのためにセルビア、マケドニア、コソボ在住のアルバニア人家庭に滞在したそうです。お母さんはモンテネグロの方のようです。まあモンテネグロ出身でもモンテネグロ人とは限りませんが?アレックス役のレード・セルベッジアはクロアチア生まれのセルビア人ですから。アン役のカトリン・カートリッジはイギリス人。キリル役のグレゴワールはフランス人と多国籍俳優・スタッフのチームワークの結晶。

この映画のようにあらゆる民族の人々がお互いを尊重し合い、認め合って生きることができると良いのですが…