原題:How I Became A Christian:Out of my Diary.By Kanzo Uchimura .1895.1893年に完成し、当初アメリカでの出版を試みるが、叶わず1895年(明治28年)5月英文書籍として警醒社書店より出版される。
その後"The Diary of Japanese Convent"のタイトルでアメリカ版が出版され、更に10年後1904年ドイツ語訳版が出版され北部ヨーロッパで知られるようになり、フィンランド語訳版、スウェーデン語訳版、デンマーク語訳版が続けて出版されることになる。1913年(大正2年)「一日本人の魂の危機」としてフランス語訳版がスイスで出版され欧米で多くの人々に読まれることになった。
しかし、日本語訳版は内村亡き後の1935年(昭和10年)岩波書店から単行本として出版されるまで待たなければならなかった。そして1938年同書店から文庫版が出版され日本国内でも広く読まれることになる。
緒言
余が書こうとしてするのは、余は如何にして基督信徒となりし乎である。何故にではない。いわゆる『回心哲学』は余の題目ではない。余はただその『現象』を記述し、余よりも哲学訓練ある人々に材料を提供するにすぎない。余は早い頃から日記をつける習慣があった。その中には余が自分に臨んだいかなる思想も事件もこれをことごとく記入した。余は自分自身を周到な観察の主題とした。そしてそれは余がかつて研究した何ものよりも神秘的であることを知った。
(中略)そういう記録の一部分が今や公衆に示されるのである。読者はそれから自分の好むいかなる結論を引き出されてもさしつかえない。余の日記は、しかしながら、余が基督教を受け入れたわずか数ヶ月以前に始まるのである。
私も以前日記をつけていた時期がありましたが、今はその習慣は途絶えました.
日記をつける前提として、他人に読まれてもいいように少し美化(脚色)してしまうきらいが私にはありましたが… 緒言のあと内村は自らの生い立ちと自分を形成した祖父母、父母のことを冷徹に記しながら、同時に、幼い時からの漠然とした多神教への疑義の思いを綴ります。
そして札幌農学校で基督教と出会います。内村鑑三の人生前半の自伝的書籍。
目次:
序 緒言
第1章 異教 第2章 基督教に接す 第3章 初期の教会 第4章 新教会と平信徒伝道
第5章 世の中へ 感傷的基督教 第6章 基督教国の第一印象
第7章 基督教国にて 慈善家の間にて
第8章 基督教国にて ニュー・イングランドのカレッヂ生活
第9章 基督教国にて 神学の一瞥
第10章 基督教国の偽りなき印象 帰国
アメリカ版序文 余の独逸国の友人に告ぐ フィンランド語版序文 解説 改定版後記
ひとりの人間の真摯でそして力強い心の叫びが、現実と理想の狭間で揺れながら、実直に語られる姿に共感を覚えました。しかし、この時代の、内村をはじめ、新渡戸稲造、岡倉天心と母国語ではない英語で、英語圏の人々を感銘させる書物を書き上げる知力に感服するばかりです。
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